吉本ばななと私の感性

 


 私の初めて好きになった小説家は、吉本ばななである。高校生の頃にドはまりして、吉本ばなな以外、読むことが出来なくなり、同じ小説を何度も何度も繰り返して読んだ。

 大学生になって、吉本ばなな以外の作家にも触れ、暫くの間吉本ばななの小説から遠ざかっていた。しかし、ここのところどうしようもなく吉本ばななの小説が読みたい。あの、深夜2時くらいの、静かでゆったりした時間帯みたいな空気に浸りたくなった。あの、強く優しい登場人物たちの愛に触れたくなった。

 そうして、本棚から『アムリタ』の文庫本を引っ張り出して、お風呂に浸かりながら読んでみたのだけれど、もう、言葉に出来ない感慨がジワーッと胸のところで広がった。やっぱり一番好きな作家なのであると、再確認した。

 情景描写の美しさと繊細さが、本当に好きで、一行に、一文に、一言に留まりたくなってしまう。うまくページが捲れない。生暖かい泥水の中にいるみたいに、うまく息が出来なくなる。ページの上に散らばる言葉が、どれも宝石みたい。泣けてくるほど美しい。

 ゆっくりゆっくり堪能しながら読んだせいで、3ページしか進まなかった。

 

 感性というものは、持って生まれたもので、自分の意志では変えることが難しいものである。私は、吉本ばななの文章に惹かれ、美しいと思えるこの感性を、死ぬまで守り通したいのだ。